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音楽に魅了されたダークな幼少期から夢の挫折とアメリカに渡るまでのChicoの人生ストーリー1
アメリカと日本のレコーディング環境の違い
C:日本とね、アメリカとかロサンゼルスって全然音楽の環境が違うの。麻衣子氏とか見たことあるじゃん街とか、ボロボロなんだよ。スタジオNOAとかないからね。
M:(笑)。
C:あんな綺麗なとこないから!
M:設備充実した綺麗なところはない。
C:そうなの。ロサンゼルスのスタジオとか、めちゃめちゃ隣の音聞こえるもん。ボロボロだし、何回も言うけど。それでみんなどうやって音楽活動をしてるのかっていうと、プロデューサーたちは家を買って、そこを自分のスタジオに改造してやってるのね。やっぱ自分たちでやってるからさ、プロフェッショナルな環境じゃなかったり、音の調整に長けたエンジニアがいないことも結構あるわけよ。
M:なるほど。
C:1番私がハリウッドのレコーディングで苦労したことっていうのが、中音(なかおと)の作り方、ヘッドフォンから返しの音の作り方とか、それが満足にできなくて。
M:なるほど。
C:レコーディングしたことある人わかると思うんだけど、この返しの中音でね、人ってものすごい上手くなるし、ものすごい下手になるの。
M:わかります。
日本人コンプレックスと敗戦マインド
C:本当に機材とかレコーディングの音の環境ってものすごい大事なのね。そういう環境の作り方とか、これでOKだよねっていう感覚が、今まで日本で私が普通にやってたものと全く違ったの。プラス、何が1番最悪だったかって、マインド面だよね。日本人の私はアメリカに憧れを抱きすぎて、アメリカ人を見上げすぎて、自分の要求をお願いできない。申し訳なくてっていうか、もうアメリカ人様々みたいなってたから。
M:いやすごいわかります、はい。ちょっと自分が劣ってるじゃないですけど。
C:劣っているんだよ!だって戦争に負けたんだもん(笑)。そういう教育を私たちは受けてきてるからさ。
M:敗戦
C:敗戦国です。
M:はい。
C:麻衣子氏もサウスバイサウスウエスト(SXSW)っていう世界的な大きなフェスとかに行くわけじゃん。そしたら、ちょっと引け目を感じるのってやっぱりあるじゃん。
M:感じますよ、やっぱり表現においてもそうだし、ビジネス面においても、やっぱシリコンバレーすごいなとか、アメリカのテック企業はすごいな、音楽もすごいなって敗戦マインドのままなんで私も。
C:そうなんだよ。それがね私の中で最初の壁だったかな。もう1つ大きいことがあるんだけどね。だから何で私がアーティストに対してマインドワークをやってるかというと、世界に挑戦したいアーティストは絶対このアメリカ人と日本人の認識が同じだよって、私達は同等だよっていう認識まで落としてあげないと、世界で挑戦することって無理だから。そういう世界レベルを見据えた人をケアしていきたいなと思ってる。
M:はい。
C:私マジで経験してたからこれ!言えないんだよ、アメリカ人に、あなたちょっとそれ違いますよってさ。
M:いや、言えないですよ。私も言えないもん。自分が本当に思ってること。
C:そうでしょ。そういう感じで言いたいのに言えない。あれ?なんか中音ひどくって、歌がよくわからない。どうしようってなってたら、もうレコーディングブースの外から周りの会話が聞こえてくるの。
M:やだ。
C:あいつ大丈夫?みたいな。発達障害なの?とかさ。発達障害だよ?。なんでこいつとやろうと思ったの?とかさ聞こえてくるの。泣くよね。
M:怖いよ。
世界で通用しない歌声への挫折
C:そういう結構厳しい試練の状況の中、私は歌わなきゃいけないっていう時に、1つ目のブロックっていうか試練が敗戦マインドだったんだけど。もう1つが歌声で。どう歌っても何をやってもアメリカ人のプロデューサーに「違うんだよな〜」って言われるのね。そうじゃないんだよって。
M:きつい。
C:そうじゃなくて、もうちょっとこういう感じで歌えない?そうじゃないだよー、ってずっと言われて。正直内面ボロボロに傷つくんだけどさ、だけどそこで凹んで自信をなくしてしまってもいい歌歌えないからさ。
だから明るく開き直って、「OKわかった、じゃこれはどう?」みたいな感じで、これ?これ?これ?これ?ってもう全部出したの私ができること。引出し全部開けたのね。どーだー!!!って。だけどやっぱり「違うんだよな〜」って言われて。
M:全否定。全否定ですね。キツイ。
C:そう、で何が違うの?ってなったときに怒りが湧いてきて。
M:はい。
C:これ私のジャンルじゃないから!私ロックなのよ!ロック、ポップスなのになんでこんなゴテゴテのR&Bなんか歌えって言われても知らねぇわ!!選曲が悪いんだよ!!っていう感じの怒りがわいてきて。演歌歌手にハードロック歌えって言ってるようなもんだよ、みたいな。
M:キレてる(笑)。
C:(笑)。キレる。
M:Chicoキレるですね。
自分はすごいという幻想に悩まされる
C:だって、私はさ日本で音楽活動してたときに、Chicoは天才的な音楽の才能を持ってるから、将来この日本の音楽業界を変える人間なんだっずっと言われてきてて(笑)。それが私の中で幻想として作り上げられたんだよ。私は天才なのに何で出来ないんだよって。
M:マインド編にいっぱい出てきた幻想という言葉がまたここで出てきましたね。
C:そうなの。だから私はその天才天才ってもてはやされてたけど、なんで天才なのにパニックになったんだとか、なぜ天才なのに、夢を諦めなきゃいけなかったんだとか、何で天才なのに、アメリカ人のプロデューサーに違うんだよって言われてるんだよとかさ。そういう自分が持ってる幻想(真実ではない思い込み)っていうのにすごい苦しめられたてたの。
M:はい。
C:私全然天才じゃないし、天才的な才能を発揮するときもあれば、まじで凡人なときもあるからさ(笑)。それが私の本当の姿だから。だけど私はちょっとね、自分の可能性とか才能を過信しすぎてたというか。幻想に入ったんです。
M:入ってたんですね。
C:それを壊してくれたのが、このアメリカ人のプロデューサーで。違うんだよって言って。そこで私って本当に歌が下手なんだって思ったの。歌が下手なんだってうか、今のままじゃ世界に通用しないんだって思い知って。
人生のドン底は深海のように静かで爽やかだった
C:そのときに私ね今まで感じたことのない、人生のどん底ってのを感じたの。これはパニックになったときとかじゃない、もう比じゃない本当の人生のどん底。
M:だって今まで自分が一番大事にしてるというか夢でもあったし、一番自分がそこに、表現を出してたところを全否定っていうことですもんね。
C:そう。
M:きつい。話を聞いてても胸が痛いです。
C:(笑)、いや本当。でもね、人生のどん底ってね、爽やかなんだよ。今までパニックとか、そういう夢が叶わなかったとか。人生のドン底とか言ってたけど、悲しんでるとか、苦しんでる時、もがいている時ってまだ人生のどん底じゃないから。
M:なるほどな。
C:本当に底の底を打ったら、深海みたいな感じなの。底に到達したら、わかるんだよ。お尻ついちゃったみたいな。あ、ここが人生どん底だ。そしたらね、もう静寂の世界が広がったような、シーンとした、あれ?っていう。
M:あれ?ですね。
打ちひしがれた後は上がることしかできなかった
C:そしたらね、笑えてくんの。あっ何もなかったんだ。全て幻想だったんだってなって(笑)。
C:本当の底まで行っちゃうと、苦しみもがくんじゃなくて、上を見上げて真っ直ぐ上昇することしか選択肢がなくなるのね。
そこからそのプロデューサーと話をして、私どうしたら良くなる?これからどうしよう?って。そしたら「ボイストレーニングを受けてみたら」って言われて。じゃあ受けてみるわって言って、でも誰に受けたらいいって聞いたら、「君日本人だから日本人の先生に受けた方がいいんじゃない?」って言われて、日本人の先生ロサンゼルスで知らないしなーどうしようかなーって??考えてた時に思いだしたの。
アメリカに来たすぐにね、語学学校の英語の先生からボイストレーナーを紹介されてたわ!と。
M:はい。
C:そういえば、語学学校のLISA先生から電話番号教えてもらってたなと思って、3年前のノートをクローゼットから引っ張り出して、どこに書いたっけなって全部ページめくって調べて、見つけたーって!ボイストレーニングお願いしますー!って言ったのがレイチェルローレンスだったのね。
M:えー!凄い縁ですね。
米プロデューサーとの不思議な縁の繋がり
C:いや、本当に。それで縁と言えばさ。話戻るけど、なんでハリウッドでレコーディングをする話になったかっていうと、まずハリウッドでレコーディングしますよっていうプロジェクトたったんだけど、そのアメリカ人プロデューサーに気に入ってもらえるかどうかっていうミーティングみたいなのをしたの。君のことをレコーディングするの、しないのみたいになってさ、その話し合いがうまくいったらプロジェクトが進むっていう感じだったんだけど。
M:はい。
C:そのときに、君どういう曲が好き?どういう感じの曲が好きなの?って言われて、その時ラジオですごい流れてた有名歌手のあの曲が好きなんだよねって言ったら、あ、俺それ作ったんだよって。
M:(笑)、凄い!
C:俺が書いた曲だよそれって、その人が書いた曲をピンポイントで私当てちゃったのね。しかもそれゴーストライターで書いてるから。
M:え!では世の中にはその情報が出ていないんですね。
C:出てない。そんなことがあって、プロデューサーもすごい縁を感じてくれて。そりゃびっくりするよね?それでその有名な曲のデモテープを聞かせてくれたの。この曲だよねって。そうそうって、その曲はデュエットでやってた曲だったんだけど、デモテープでは女の人が全編を歌っててね。で、そこからこの曲の感じが好きなんだったら、俺が持ってる曲の中で似てる曲で録ってみようかみたいな感じでレコーディングが始まったんだよね。
M:そうだったんですね。
C:それでR&Bの扉を開けられて。なんかメロウな感じ。
M:メロウな感じ(笑)。
C:そうなのよ。そんな縁があって、レコーディングになったんだけどね。
M:そして挫折して、ボイストレーナーのレイチェルさんに行きついた。
挫折から謙虚さを取り戻し学び始める
C:レイチェルとのトレーニングは最初の2.3回はレコーディング用の曲を仕上げるためのボイストレーニングをしてもらって。レコーディングが終わってから、ちゃんと発声を整えようかなと思って。そのとき私ミックスボイスっていう声もなんか聞いたことあるけど、なんだろうなって、ちゃんとはっきりは知らなくて。その定義がわからない状態だったから、ミックスボイスってあるじゃないですかって。私ねミックスボイスをやってみたいんですって言って。あっミックスボイスね、こういう声ねって。「あーーーーー」(ミックスボイス)って目の前でやられたときに、これだ!と。
M:なるほど。
C:私が探してた声はこれだ!っていうのを目の前でやられて、その声を手に入れるんだったら私は3年でも4年でも、あなたのレッスンに来るので、よろしくお願いしますってその時に心の中で土下座したんだよ私。
M:そうだったんですね。
C:これが私のベルティングとの出会い。
M:へえ、そこで初めて。
C:そこで初めて。あれ、こんなことができる人がこの世の中にいるのって感じ。こんなに声を自由に使う人がこの世の中にいるんだ!と。LAに住んでたり、ハリウッドでレコーディングしたりとかボイストレーニングをしたり、私のキャリアの最初のきっかけになる話をしたら、結構華やかだなって思われる部があるんだけど、本当はもう挫折の連続。
M:挫折の連続ですね。
C:でもさ、前置きが長くなったけど、今日みんなに話したいのはさ。挫折できる人が一番強いなって。
M:挫折ですね。つまずいて転んで。
挑戦するから挫折する、挫折をするから強くなる
C:若いときっていうのは、恐れがないから勢いでいけるのよ。勢いで何でも出来るのよ。あと初めてやることとか、あんまり興味のないことって何でもできるのよ、恐れがなく。だけど1回その業界に入ったりだとか歌をしっかりやろうって心を決めて、そこで数々の挫折をしていくわけじゃん。もう立ち上がれないかもしれないっていう挫折もするわけじゃん。
M:はい。
C:そういう挫折や失敗、そこから立ち上がった人が本物だからね。
M:挫折というか、そういうふうになると、逃げちゃう人は逃げちゃうだろうなって思います。逃げちゃうというか自覚しないかも。
C:自覚しない、私も若干自覚しないで演歌歌手がハードロック歌えって言ってるようなもんだろっていう感じで怒って逃げてたときがあったから。だからここで止まってしまう人もいると思う。
M:なるほど。
学びのチャンスを掴む人と逃す人
C:そうなんだよね。私の場合はやっぱり音楽で価値を感じてたというか、私の最高価値ってのは音楽だからさ。最高価値で生きてる時って、人はものすごい誠実さと謙虚さを手に入れることができるのね。
売れない歌手からアメリカで挫折して1から出直した経験を経て、今ベルティングを教え始めて8年になるんだけど、皆、私がベルティングってこういうものだよとか、こういう声が出るんだよって言ったら、「あーうんうん、ハイハイわかります」ていう。
M:(笑)。わかってないじゃないっすか。
C:うん。あとワークショップに来たりする子も、Chico先生が言ってることと私が思ってることと全く一緒だったので安心しましたとか。
M:それ多分全然聞いてないですね。聞いてないし多分、違いがわからないぐらいにわからないんですね、たぶん。
C:それか本当にできるのかは、わかんないけど。でも結構そういうコメント多くって、Chico先生がやってることは私と一緒ですねみたいな。確認したいのかな、自分の力っていうの?私もちゃんとできてますよ、ていうのをハンコが欲しいから、会いに来てるのかなって人もいるし。あとは実際に声を聞いて全然できてないなっていう子も、私がこうやって説明してると、「あ!あれですね」とか、「はい!」ていうの。違うから!!って。
M:あんまり洋楽聞いてないんじゃないんですかね、洋楽とか、外国人の歌をあんまり聞いてないから違いがわからないのかもしれないです。
挫折をしないとたどり着けない境地がある
C:そうなのかな。いやでも私が1番感じるのは、現実を直視するというか、自分の実力を直視するその力がないんだな。昔の私みたいに、「私は凄い」っていう幻想に入って自分を守ってるというか。知ってることとできることは違うんだよね。知識と技術の間には雲泥の差がある。
M:なるほど。
C:自分は下手だ、自分ができてないっていう現実を認めることが怖い人がたくさんいて。
M:違いがわからないと自分の成長もできないくないですか?見れないんだ。
C:見れない。だからプライドや幻想があるのよ。
M:何のプライドですか。
C:でもあるでしょ?歌ずっとやってるし、自分の歌っていいし、私歌上手いのよっていう、歌をやってる人っていうのは、ものすごい自己顕示欲とプライドっていうのがすごい高いから、だから他の自分よりも歌が上手い人に何かを習おうとか、そういう姿勢を持つことってすごく難しいの。私も歌手活動をしてた時は、自分が一番でいたかったから誰かに歌を習うとか絶対嫌だったもん。だからこの気持ちは痛いほどわかる。
M:私は手に入れたい声がいっぱいあるから。。。なるほど。
C:あとはインスタとかにたくさん質問もくるのよ。ベルティングのやり方教えてくださいとかさ。でも本当に人生をかけて勝負して、思いっきり挫折してごらんって。本当に自分って何もないんだなって。世の中の歌手とか、歌手を目指してる駆け出しの子たち、このランキングをつけたときに、本当の自分ってどこにランクするんだろう。自分の立ち位置っていうのが、見つめられたら、一から出直すしかないんだよね。
M:なるほど。
C:そういう大切さを教えてくれたのが、このハリウッドでのレコーディングで。
M:もう本当にボキッて折れられたって事ですね。
C:そうだよ。
M:ボキって(笑)。
C:そうだよ(笑)。だけどレイチェルに出会ったときに、ここまでいけるんだよっていう自分の将来っていうか、近い未来を見せてもらったときに、もう絶対そこに行きたい!!!と思って。もうそこでプライドなんか関係ないからさ。これからの挑戦にワクワクしかなくて。もしそこでまだプライドがある人は歌が最高価値なんじゃなくって、何か違うものが最高価値なんだと思うだよね。
M:なるほど、歌じゃないんでしょうね。
C:ほんとに歌を愛して芸術を愛してっていう人の前で、あなたの芸術がもっと良くなりますよ。これを手に入れたら。っていうものを提示されたときに、あ、いらないですっていう人は違うんだと思う。
でも、なんかいろいろ今日話してるけどさ、そうやって挫折できて、ちゃんと自分を立て直そう、って思える人って世の中の多分10%もいないかもしれない。
M:少ない、、なるほど。
C:歌手がプライドが高くて歌を学びたくないのはよく知ってる。だからプロの歌手の方も喉を壊してボロボロになるまで助けを借りずに一人で苦しんでたり。だからこそ、全ての才能のあるアーティストにREBELTING発声法を伝えたいなって、ほんとそればっかり考えてる。
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